日本古来の国技である大相撲。土俵上で繰り広げられる熱戦は多くのファンを魅了していますが、力士たちの「給料や年収の仕組み」については、一般的な会社員とは大きく異なる特殊なシステムを採用しているため、知られざる部分が多くあります。階級によって待遇が天と地ほど違うとも言われる相撲界ですが、実際のところどのくらいの収入を得ているのでしょうか。
2026年現在の動向も踏まえつつ、十両以上の「関取」と呼ばれるエリート層の月給やボーナスから、給与が支給されない幕下以下の力士たちのリアルな生活事情、そして土俵を華やかに彩る懸賞金の仕組みまで、大相撲の給与体系の全貌を徹底的に紐解いていきます。
大相撲の階級と給与体系の基本構造:関取と幕下以下の決定的な違い

大相撲の番付(階級)は、上から順に「横綱・大関・関脇・小結・前頭」の「幕内」、「十両」、「幕下」、「三段目」、「序二段」、「序ノ口」に分かれています。この中で、日本相撲協会から毎月給与(月給)が支給されるのは、上位2つの階級である十両以上(関取)の力士に限られています。
相撲界において「関取」になれるのは、全約600〜700人の力士全体の中でわずか1割程度(およそ70人前後)の狭き門です。関取に昇進した瞬間から、力士は「一人前のプロフェッショナル」として扱われ、専用の個室が与えられたり、付き人を従えたりすることが許されるようになります。給与体系においても、この「十両の壁」の前後で生活水準が文字通り激変する仕組みとなっています。
十両以上の給与・ボーナス事情:関取たちの月給と賞与の仕組み
十両以上の関取には、階級(番付)に応じた毎月の「月給」に加えて、年2回(夏場所後・九州場所後)の「賞与(期末手当)」が支給されます。加えて、場所ごとに成績に応じた持ち回り報酬なども加算されるため、年収ベースでは一般的なビジネスパーソンの平均を大きく上回るケースがほとんどです。
最高位である「横綱」や「大関」をはじめとする上位陣は、基本給のベースが非常に高く設定されているほか、後援会からの支援金や懸賞金の獲得本数も桁違いに多くなります。テレビやメディアで見かける華やかなイメージの多くは、この十両以上の関取たちの生活に基づいています。
| 番付(階級) | 給与・待遇のステータス | 主な収入源・手当の特徴 |
|---|---|---|
| 横綱・大関 | 相撲界の最高峰。年収数千万円〜 | 高額な月給、賞与、横綱・大関手当、膨大な懸賞金、CM・メディア出演等 |
| 三役(関脇・小結)・前頭 | 幕内上位〜中位。年収1,000万〜数千万円 | 安定した月給、賞与年2回、勝ち越しによる褒賞金、懸賞金 |
| 十両 | 関取の登竜門。年収約1,000万円前後 | 初めて月給が支給される。賞与、場所手当、個室や付き人の特権 |
| 幕下以下 | 無給(例外として場所手当あり) | 月給なし。本場所ごとの「場所手当(数万〜数十万円程度)」のみ |
幕下以下の力士は無給?過酷な下積み生活とリアルな収入事情
前述の通り、幕下以下の力士(幕下、三段目、序二段、序ノ口)には、日本相撲協会からの毎月の月給は一切支給されません。では、彼らはどのようにして生活を維持しているのでしょうか。
幕下以下の力士たちには、月給の代わりに「場所手当」と呼ばれる手当が、本場所ごとに支給されます。しかし、これは年6回の本場所ごとに支払われるものであり、額面も階級が下がるにつれて数万円程度と非常に少額になります。そのため、ちゃんこ長を務めたり、兄弟子たちの身の回りの世話(ちゃんこ作り、洗濯、買い出しなど)をしたりする過酷な下積み生活を送ることになります。
衣食住に関しては、各部屋で共同生活を送り、食費や住居費(部屋の寮)が基本的に無料、あるいは格安で提供されるため、最低限の生活は保障されています。しかし、自分の小遣いや日用品の購入、トレーニング費用などを賄うためには、家族からの仕送りや、後援者からの差し入れ、あるいは親方からの小遣いなどに頼らざるを得ないのが、若手力士たちのリアルな実態です。
土俵の華「懸賞金」の仕組み:1本あたりの金額と手取りのカラクリ
大相撲の本場所中、土俵の周りを企業や個人の名前を書いた旗を持った「呼び出し」が歩く光景はおなじみです。これが「懸賞金」であり、取組の勝者に送られる大きな追加収入源となります。
1本あたりの懸賞金の金額は、企業などが拠出する費用を含めて1本につき一定額(現在の規定では約6万円前後、そのうち手取りとして力士の懐に入るのは1本あたり数万円、残りは税金や諸経費、協会経費などに分かれます)が設定されています。人気力士の取組には数十本の懸賞がかかることもあり、1番勝つだけで莫大な現金が封筒に入れて手渡されます。
この懸賞金は、支度部屋に戻った力士にその場で現金として手渡される仕組みになっており、勝負に勝ったその瞬間に多額の現金を手にするという、プロスポーツ界でも非常に珍しいキャッシュフローのシステムとなっています。
力士の引退金と退職金:土俵を去った後のセーフティネット
現役を引退した際に出る退職金や引退金も、力士の人生設計において極めて重要な要素です。日本相撲協会では、在籍した期間や最終的な番付(最高位)に応じて「退職金」が計算され支給されます。
また、多くのファンが注目する「断髪式(引退相撲)」で集まる収益なども、引退後のセカンドキャリアの大きな資金源となります。ただし、関取として長く活躍した力士と、幕下以下でひっそりと引退した力士とでは、受け取れる金額に大きな格差があるのも事実です。引退後に相撲協会の「親方」として残る資格(年寄名跡)を取得できるのは一部の有力な元関取に限られており、それ以外の元力士たちは、ちゃんこ店の経営やトレーナー、一般企業への就職など、新たな道へ進むことになります。
【力士の給料】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:幕下以下の力士はアルバイトをしてもいいのですか?
A1:日本相撲協会の規定により、力士は相撲道に専念するため原則として副業やアルバイトは禁止されています。そのため、若手力士たちは部屋での共同生活における食事や住まいのサポートを受けながら、稽古に打ち込んでいます。
Q2:懸賞金は勝った力士が全額もらえるのですか?
A2:懸賞袋の中には現金が入っていますが、実際には税金の源泉徴収分や、日本相撲協会が管理する経費、さらに所属する部屋の経費などが差し引かれた上で、本人に手渡される仕組みになっています。
Q3:横綱や大関になると、年収はどれくらいになるのですか?
A3:基本の月給や年2回のボーナスに加え、横綱・大関としての特別手当、さらに圧倒的な数の懸賞金やCM出演・メディア寄稿などの副次的収入が加わるため、トップ力士の年収は数千万円から場合によっては1億円を超える規模になると言われています。
大相撲の力士たちの給料や年収事情を紐解くと、そこには徹底した「実力主義(関取か否か)」の構造が存在していることが分かります。
十両に上がれば一躍高給取りとなり、独自の生活スタイルや社会的ステータスを手に入れることができる一方で、幕下以下の段階では無給の過酷な下積み生活を耐え抜かなければなりません。この厳しいピラミッド型の給与体系こそが、若手力士たちに「一刻も早く関取に昇進する」という強烈なモチベーションを与え、大相撲のレベル維持と緊密な上下関係を支えている原動力と言えます。